ここでは施術所の「施術所開設届」と「出張施術業務開始届」2つの申請方法を解説します。
※地域によっては出張業務開始届など微妙に名称が違うことがあります
訪問業務のみでの開設を前提とした上で、、、
- どちらの申請方法を選ぶべきか
- 具体的な申請方法
これらをポイントに解説していきます。
以下の順番で検討していきましょう。
- 1人先生でずっと業務するなら出張施術業務開始届
- 社員増員を視野に入れているなら施術所開設届
- 施術所開設届は自宅にしておくと支出を減らせる
- 2人先生で業務するなら
①自宅で施術所開設 ②テナントで施術所開設 - 出張施術から施術所へ変更時、償還払い期間が発生する
あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師の独立開業方法は2種類
あはきの開設には2種類の届出があります。
- 施術所開設届
- 出張施術業務開始届
どちらもメリット・デメリットがあり、自分に適した申請をしないと金銭面での大きな損失に繋がります。
まずはそれぞれの特徴をみていきましょう。
施術所開設届のメリット・デメリット
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の施術所開設には自宅やテナントが施設構造基準を満たしている必要があります。
また、2~3名程度の施術者数であればまだいいのですが、テナント開業の場合、事務所利用を大家さんが嫌がることも多いので「このテナント良いなぁ」と思っても借りられないケースもあります。
複数施術者用の駐輪場スペースも確保するのもそれなりに大変です。
- 初めから2人以上の施術者で運営を想定している
- 早期に施術者増員を考えている
- 自宅開業だが、出張専門でも施術所でも申請可能。かつ、該当する部屋は待合・施術スペースとして維持できる
こういう状態であれば施術所の開設は有効と思います。
出張施術業務開始届のメリット・デメリット
個人で開業するなら出張施術業務開始届がベターだと思います。
理由は3つです。
- 余計な固定支出をカットできる
- 開設のタイミングをコントロールできる
- 訪問業務において施術所をそもそも利用することが少ない
事業成功のコツは「スモールビジネス」を心がけることです。
初期費用を抑えたり、毎月の支出を出来る限り無くすなどして、小さく事業を始めていくことだね。
長らく訪問業務を行ってきて思うことは、施術所の有無がケアマネさんからの紹介数に関わってくることは無いです。
1人先生にも関わらず、どうしてもテナント開業を行いたい場合は初めのうちは出張施術で事業を行い、毎月の売上が安定したらテナントを借りるくらいの気持ちでも良いと思います。
デメリットにもある通り、出張専門から施術所開設に切り替え時は償還払いの期間が発生します。
これは受領委任払いの取り扱いが書類到着日に起因するため、施術所開設日と受領委任払い取り扱い日に数日間の期間があくためです。
増員予定があるのなら施術所の開設も検討しておくと良いと思います。
それぞれの申請条件
次に、施術所開設届と出張施術業務開始届の申請条件をみていきます。
施術所開設を検討している方は要チェックです。
施術所開設届
(1) 施術所の構造設備基準
- 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
- 3.3平方メートル以上の待合室を有すること。
- 施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに変わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではない。
- 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
施術室と待合室に扉などで区切りがない場合は、仕切りを設けなくてはいけません。
この仕切りが天井まで覆われていないとNGな保健所もあれば、突っ張り棒とカーテンでOKな保健所もあります。
際どいラインは保健所担当者の判断次第です。
- 鍼灸やるなら消化器設置は必須
- 鍼の廃棄BOXと契約書類を見せてください
- ポストに院名を掲示してください
消火器と廃棄ボックスはアスクルで購入できるので用意しておきましょう。
出張施術業務開始届
(1) 出張施術業務の条件
- 施術所ではないので構造基準は特になし
- 住民票の記載地でないと不可
僕が初めて開始届を提出しに行った時は5分くらいで完了しました。
びっくりするくらい簡単です。
具体的な申請方法
最後に、具体的な申請方法を解説します。
どちらも順を追って進めていけば問題ないので安心してくださいね。
今回は「東京都小平市」を想定して解説しますが、記載内容自体は地域によって大きな変わりはないと思うので参考にしてください。
施術所開設届
下記の順番で進みます。
- 事前相談
- 図面の確認
- 施設完成
- 開設(開設届の提出)
保健所によって手続きの順番に多少の違いがあるので、僕自身が経験した流れをご紹介します。(大枠はあまり変わらないはずですが、細かい部分は保健所に問い合わせましょう)
1.事前相談の連絡をする
① 管轄の保健所へ連絡し、施術所開設の意向を伝える
「施術所を開設をしたいので、必要事項を教えていただきたい」と伝えます。
その際に手続きの説明や、場合によっては来所日の調整となります。
来所日に図面を持ち込めるようなら持ち込みます。
2.間取り図の作成
イチから作ると面倒なので、簡単にできる方法をお伝えします。
- 物件情報の記載されているチラシ(間取り図が載っているもの)をコピーする
- 間取り図部分だけになるよう切り取り、再度コピーする
- コピーした間取り図に必要事項を記載していく
下記画像は見本です。
手書きでも、パソコンで入力したものでもどちらでも大丈夫です。
よく間違えやすいポイントが「窓枠」です。
窓は開放できる面積で求めるので、実際に窓を開けてみた部分の面積を記入するようにしてください。(窓全体で計算してはダメですよ)
3.開設届の作成
① 所属地域の管轄の保健所HPをチェック
東京都小平市なら「東京都多摩小平保健所」
②「施術所の手続き」等のページから該当するファイルをダウンロード
Google検索では「東京都 ◯◯市 あはき 開設」などで検索すると該当ページが表示されると思います。
③ 記載手順
① 開設者住所の記載
開設者自身の住所を記載します(法人なら主な事業所所在地)
② 開設の年月日、名称、場所を記載する
③ 業務の種類を記載する
④ 施術者の情報を記載する
開設者が施術者であることが殆どだと思います。免許証情報も記載するので、記載内容に誤りが無いよう注意しましょう。
⑤ 構造設備の概要を記載する
図面に記載した情報と同じように記入しましょう。
⑥ 開設者の情報を記載する
「上記の通り」でOKです
⑦ 届出日、開設者氏名を記載する
押印を忘れないよう注意しましょう
⑧ コピーする
施術開設届は2部提出するため、忘れずにコピーをしておきましょう。
※押印部分はコピーでは申請通らないので、2枚とも忘れずに押印しておくこと
手書きが面倒なら、パソコンで印字しても問題ないです。(押印は2部ともすること)
4.案内図の作成
最寄り駅からの案内図を作成します。
これは手書きでも、エクセル等での作成でも問題ありません。
5.書類の提出(管轄の保健所)
① 図面で「施術所の構造設備等」を確認してもらう
管轄の保健所へ連絡してあると思いますので、保健所の担当者と予定を合わせて来所します。
しっかりと必要事項が記載されていれば、すぐに終わります。
合わせて開設届も提出しましょう。
② 開設届の提出
開設届の提出に必要なものを一覧にしておきますので参考にしてください。
- 開設届 2部
- 各免許証のコピー(A4縮小) 2部
- 各免許証の原本
- 作成した平面図(間取り図) 2部
- 案内図 2部
- 本人確認書類(運転免許証やパスポート)
- 印鑑(万が一修正が必要な場合に現地で使用)
【開設者が法人の場合】
- 法人の定款 2部
- 法人の登記事項証明書 原本1部、コピー1部(発行後6ヶ月以内のもの)
6.実地調査
保健所の担当者と日程調整後、実際にテナントに来ていただき提出した書類と差異がないか確認します。
確認後、副本が交付されます。
事前相談の時に図面を確認するってことは、先にテナントを借りてもいいのかな?
保健所の方からは「借りる前に来てくださいね」と言われたけど、実際は物件を見つけた時に契約しないと取られちゃうからね。
しょちょーの時は、いつもテナント契約後に保健所とやり取りをしていました。
※あくまでも参考程度にしていただき、実際の動きは保健所に確認をしてみましょう。
出張施術業務開始届
1.様式のダウンロード
① 所属地域の管轄の保健所HPをチェック
東京都小平市なら「東京都多摩小平保健所」
②「施術所の手続き」等のページから該当するファイルをダウンロード
Google検索では「東京都 ◯◯市 あはき 開設」などで検索すると該当ページが表示されると思います。
2.記載手順
① 開始年月日を記入
10日以内の過去の日付で記入する
② 業務の種類を記入
取得国家資格にあわせてチェックをする
③ 免許証交付者、免許番号、免許年月日の記入
免許証をみながら間違えないよう記入します。
④ 届け出をする日にちを記入
本用紙を提出する日(提出日当日)を記入します。
⑤ 住所等の記入
出張施術の拠点となる住所を記入します。電話は携帯で問題ありません。
⑥ コピーする
出張施術業務開始届は2部提出するため、忘れずにコピーをしておきましょう。
※押印部分はコピーでは申請通らないので、2枚とも忘れずに押印しておくこと
手書きが面倒なら、パソコンで印字しても問題ないです。(押印は2部ともすること)
3.書類の提出(管轄の保健所)
管轄の保健所へ提出します。
もしも管轄の保健所が分からない、という場合はGoogle検索で「◯◯市 保健所」で調べてみましょう。
なおかつ調べた保健所に「こちらに提出で合っていますか?」と問い合わせれば100%間違えることはないと思います。
念の為、提出物一覧を記載しておきますので参考にしてください。
- 出張施術業務開始届 2部
- 各免許証のコピー(A4縮小) 2部
- 各免許証の原本
- 印鑑(万が一修正が必要な場合に現地で使用)
- 本人確認書類(運転免許証やパスポート)
※あくまでも参考程度にしていただき、実際の動きは保健所に確認をしてみましょう。
現在の居住地付近に営業先が無い場合、テナントを借りるべきか?
個人で開業するから出張施術業務開始届で申請したいけど、住んでるまわりに営業先が全く無いんだ。
もう施術所としてテナント借りるしかないかな?
基本的には借りる必要はないと思うよ。
このケースは、自宅周辺に営業先が無い=自宅周辺では紹介が見込めないためターゲットが多い地域に施術所を開設するかどうか?がポイントになっていきます。
この場合であっても基本的に自宅を出張施術所(または施術所)として登録することをオススメします。
営業活動、訪問業務自体をターゲットが多い地域の中で行うようにしていけばOKです
つまり、ターゲットが多い地域に通勤しているような感覚になりますが、それでOKです。
訪問マッサージや鍼灸は16kmまで往診が認められているので、滅多なことでは往診距離をオーバーすることはないと思います。
また、テナントを借りたくない大きな理由が…
固定費がエグい。
毎月の固定支出は「本当にきつい」の一言に付きます。
《 家賃8万円・礼金1ヶ月・保証金6ヶ月の場合 》
初期費用は900,000円かかります。
- 前家賃 80,000円
- 礼金 80,000円
- 保証金 480,000円
- 仲介手数料 80,000円
- 保証会社委託料 80,000円
- 火災保険や鍵交換など 100,000円
《 備品購入・毎月の水道光熱費・毎月の家賃 》
その他の費用として年間1,160,000円かかります。
- 備品購入 100,000円
- 年間の水道光熱費 100,000円
- 年間の家賃 960,000円
合計・・・2,060,000円
上記の例でテナントを借りていると「206万円」もの費用がかかることを覚悟しなければいけません。
こうしてみると結構な金額なので、僕自身であれば最低3~4名の施術スタッフでの運用を検討していないとテナントを借りるのは負担が大きい、と思います。
逆に考えれば、自宅開業を選択した時点で1年目は200万円。2年目以降は100万円の固定費が浮いていると考えられるよ!
まとめ
事業スタイルによって開設のやり方は大きく変わります。
ご自身の目的・目標から逆算した開設方法を選んでいただけたらと思います。
以下の順番で検討していきましょう。
- 1人先生でずっと業務するなら出張施術業務開始届
- 社員増員を視野に入れているなら施術所開設届
- 施術所開設届は自宅にしておくと支出を減らせる
- 2人先生で業務するなら
①自宅で施術所開設 ②テナントで施術所開設 - 出張施術から施術所へ変更時、償還払い期間が発生する
今回は以上です。
皆さんのご活躍を応援しています。頑張ってくださいね!^_^